「宝塚」という名前の由来
「塚(つか)」は古墳を意味する言葉です。宝塚市内には200基を超える古墳が残り、古くからこの地は「宝の塚」と呼ばれてきました。江戸時代の地誌『摂陽群談』(1701年)には「この塚のそばで物を拾う者には必ず幸せがある。これによって宝塚の名が付いたといわれる」という記述が残ります。
「宝塚」の名が広く知られるようになったのは、1887年に宝塚温泉が開業してからのこと。市として正式に発足したのは1954年で、川辺郡宝塚町と武庫郡良元村が合併して宝塚市が誕生しました。
古代の宝塚 — 数多くの古墳
宝塚は猪名川流域でも古い古墳が集まる地域です。なかでも中山荘園古墳は、兵庫県内で唯一の八角形の墳丘をもつ古墳で、天皇陵に用いられた形式が郊外の住宅地に残るとして国の史跡に指定されています。地名の「塚」が示すとおり、宝塚は古代から人々が暮らした土地でした。
江戸時代 — 宿場町・小浜宿と酒造り
宝塚駅にほど近い小浜(こはま)は、有馬街道と西宮街道(京伏見街道)が交差する交通の要衝として栄えた宿場町・寺内町です。南北750m・東西400mの総構え(大堀川と土塁による防御構造)を持ち「小浜城」とも呼ばれました。15世紀末、一向宗の善秀が毫摂寺(ごうしょうじ)を建立して小浜荘を開き、豊臣秀吉や千利休が有馬温泉への道中に立ち寄ったとも伝わります。
また小浜は、名水「玉の井」を生かした酒造りの地でもありました。慶長19年(1614年)、山中清直が「玉の井」で酒造業を開始。「小浜流(こはまりゅう)」と呼ばれる酒造技術は、後に有名になる灘五郷に先行して栄えたといわれます。1999年開設の宝塚市立小浜宿資料館(名水「玉の井」を保有する旧山中家住宅を活用)で、その歴史を今も知ることができます。10月下旬の小浜皇大神社例大祭とだんじり曳行は江戸期からの伝統行事です。
近代 — 温泉と小林一三の街づくり
1887年(明治20年)に宝塚温泉が開業すると、武庫川沿いに温泉町が形成されます。そこへ大きな転機をもたらしたのが、阪急電鉄の創業者・小林一三(1873〜1957年)です。明治40年(1907年)に「箕面有馬電気軌道」を創立、明治43年(1910年)に梅田〜宝塚間・石橋〜箕面間を開業しました。
開業と同時に「池田室町住宅地」を分譲、当時珍しかった月払い割賦販売を導入し、サラリーマン層が郊外に持ち家をもてる仕組みを日本で初めて実現しました。「鉄道を敷く前に沿線に住民を作る」という逆転の発想です。大正9年(1920年)には日本初の百貨店「阪急百貨店」(梅田)を鉄道ターミナルに開業。鉄道・住宅・百貨店・温泉・劇場を一体で経営する「私鉄沿線総合開発モデル」を確立し、この方式は全国の大手私鉄に波及して日本の鉄道経営の基本形となりました。宝塚は、その出発点となった街です。
宝塚歌劇の誕生(1914年4月1日)
明治44年(1911年)に小林一三が開いた宝塚新温泉には、当時としては珍しい大きな室内プールがありました。しかし冬は使えなかったため、その空間を生かす余興として大正2年(1913年)に「宝塚唱歌隊」が結成されます。
そして大正3年(1914年)4月1日、プールを改造した「パラダイス劇場」で初公演が行われました。演目は桃太郎を題材にした歌劇『ドンブラコ』など。これが宝塚歌劇の始まりです。温泉の集客のために生まれた少女歌劇が、2024年で創立110周年を迎え、世界に知られる劇団へと育ちました。宝塚歌劇そのものを詳しく知りたい方ははじめての宝塚歌劇 観劇ガイドをご覧ください。
歴史散歩の実用Tips
- 小浜宿は徒歩1〜1.5時間の散策コース:阪急宝塚駅から徒歩約10分の距離。名水「玉の井」と旧山中家住宅(小浜宿資料館)を軸に、毫摂寺・首地蔵・皇大神社を無理なく回れます。小浜宿資料館は月曜休館・年末年始休館が基本で、開館時間は 10:00〜17:00 頃(入館無料または少額)。訪問前に宝塚市公式サイトで最新の開館情報をご確認ください。
- 小林一三の足跡を追うなら池田市もセットで:宝塚から阪急で15分ほどの池田市には小林一三記念館(旧邸「雅俗山荘」・逸翁美術館)があります。宝塚+池田の1日コースが「私鉄開発モデル」の全貌を理解する最短ルート。
- 歌劇の始祖地は宝塚大劇場の前身「宝塚新温泉跡地」:大劇場そのものは1993年リニューアル、2026年に2,619席化された近代施設ですが、周辺の景観に「日本のリゾート発祥地」の面影が残ります。半日モデルコースで歩けます。
よくある質問
- 「宝塚」の名前の由来は?
- 「塚」は古墳を意味し、市内に多くの古墳が残ることから「宝の塚」と呼ばれたことに由来するとされます。江戸時代の地誌にもその記述があります。
- 宝塚歌劇はいつ始まりましたか?
- 1914年4月1日、宝塚新温泉のプールを改造した劇場での初公演が始まりです。2024年に110周年を迎えました。
- 宝塚はなぜ温泉地になったのですか?
- 武庫川沿いで温泉が確認され、1887年に宝塚温泉が開業。その後、阪急の鉄道とリゾート開発によって発展しました。
余談ですが、コンビニでおなじみの炭酸水「ウィルキンソン」も、明治期に宝塚(小林)で瓶詰めが始まったことが知られています。身近なブランドにも、宝塚の歴史が隠れています。
- 宝塚市 公式サイト(市の歴史・文化財・都市概要)
- 宝塚歌劇 公式サイト「1914年〜」(歌劇団創立史)
- 小林一三記念館 公式(宝塚歌劇の生みの親・阪急創業者)
- 宝塚市国際観光協会(小浜宿・宝塚温泉の観光情報)
- Wikipedia「小浜宿」(江戸期の宿場町の一般情報)
- Wikipedia「宝塚市」(市域の歴史概観)
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